大雪山国立公園の東に位置するニペソツ山。特徴的な山容に惹きつけられる人も多く、幻の百名山とも言われています。この記事ではそんなニペソツ山の魅力や登山情報をお伝えします。
ニペソツ山の概要
ニペソツ山は北海道の大雪山国立公園の東大雪に位置する標高2013mの山です。標高2000mを超える山としては国内では最も東に位置します。ピラミッド型の山容は眺めるだけでも美しく惹きつけられます。
山頂からは360度のパノラマ展望で、大雪山(旭岳)からトムラウシ、十勝岳、石狩岳、ウペペサンケ山などの山々が見渡せます。また山頂付近は高山植物の宝庫で、登山道途中の岩場はエゾナキウサギの生息地となっており自然が豊かな場所でもあります。
ニペソツ山は二百名山として選定されています。「日本百名山」を記した深田久弥はこの本の執筆後にニペソツ山に登っており、「実に立派な山であることを、登ってみて初めて知った」と後に言ったことから「幻の百名山」とも言われています。
ニペソツ山は東大雪の単独峰で登山道は急で、上級者向けとされています。登山道は2つありますが、林道崩壊のため幌加温泉からのルートがメインルートとなっています。この記事では私が実際に歩いた幌加温泉ルートを紹介したいと思います。
幌加温泉ルートの概要
幌加温泉登山口からニペソツ山山頂へは往復コースとなります。
時間 | 12時間50分 |
距離 | 22.7km |
登り/降り | 1895m/1895m |
日帰りも可能ですが、約13時間とかなり長い山行になります。前天狗に野営指定地があり1泊2日でテント泊山行も可能です。
幌加温泉登山口へのアクセス
幌加温泉登山口までは旭川からは車で約2時間、帯広からは約1時間半かかります。幌加温泉入口までバスで行くことはできますがバスは1日に1本しかなく、車でのアクセスがいいでしょう。登山口は国道273号からすぐで、最後の数百メートルの林道は未舗装路です。注意すべきなのは周辺に全くお店やスーパーなどがないことです。旭川方面から来る場合最後のコンビニは層雲峡、帯広方面であれば上士幌になります。
私は利用しませんでしたが、下山後登山口近くの幌加温泉湯元鹿の谷で温泉に入ることができるようです。またこちらは宿泊も可能なようです。
幌加温泉湯元 鹿の谷
https://kamishihoronavi.jp/single_spot/single_spot-554
幌加温泉ルートでニペソツ山1泊2日
私は2024年の7月にニペソツ山へ1泊2日のテント泊で登りました。ルートの紹介と合わせて山行の様子をお伝えしたいと思います。
1日目:幌加温泉登山口→前天狗野営指定地⇄ニペソツ山往復
朝5時ごろ登山口へ着きました。7月中旬の平日であるこの日の天気予報は快晴で、私が着いた時にはすでに7台の車が停まっていました。地元の人曰く「週末並み」の多さだそうです。半分以上は他県ナンバーの車でした。
駐車場はでこぼこしていて、雨の日などはかなりぬかるむのではないかと思います。すでに7台車があった後では平らな駐車スペースを探すのに時間がかかりました。ちなみに駐車場手間数十メートルに2、3台車が止められるスペースもありました。駐車場には仮設トイレと携帯トイレ回収ボックスがありました。
登山口に入林届の記入場所はありましたが、登山届を提出する場所はありません。登山届は事前に提出しておく必要があります。
しばらくは林道が続きます。
林道から登山道へ分岐があります。ここはわかりにくく、真っ直ぐ林道を進んでしまいそうなので注意が必要です。
沢を渡る箇所です。ここと数百メートル登ったところの沢沿い(こっちはわかりにくい)が登山道の唯一の水場です。
ここから登りがきつくなります。樹林帯の中の登山道はかなりぬかるんでしました。途中沼が見えてきます。
長い樹林帯を歩いていくと見晴台へとたどり着きます。ここからニペソツが眺められます。ここから登山道から展望できる箇所が増えていきます。
前天狗岳への急登が始まります。私が行ったときは高山植物が咲き乱れていました。
ロープを使う箇所もあります。
登り切ると展望が開け、大雪山やトムラウシが望めます。
稜線を歩くと前天狗の野営指定地があります。テントが設営できるスペースは何か所かありますが、いい場所はすぐに埋まりそうです。また吹き曝しのため風が強い日は注意が必要です。携帯トイレブースが設置してあります。
野営指定地からはニペソツがどんと構えている様子が望めます。まだ時間もあり、天気も持ちそうだったのでニペソツまで行くことにしました。
登山道周辺は高山植物の宝庫でした。
降りながら目の前にニペソツが見えます。正直「あれを登るのか」と気が引けました…。
稜線に出てまもなく山頂です。
山頂に着きました。山頂からは大雪の山々だけでなく、糠平湖も見渡せる360度のパノラマビューでした。
天気が良く、景色も良かったのでたった一人で1時間半ほど山頂にいました。テント泊なので下山を気にしなくていいので気が楽でした。まだいたかったのですが野営指定地に戻ります。前天狗の山容もかっこいい。
この日テントは3張りでした。周辺はエゾナキウサギの生息地で、鳴き声が聞こえます。テントのすぐそばにもナキウサギが現れました。
この日は雲がかかり夕日はいまいちだったのですが、夕日を見ようとすれば、野営指定地からニペソツの方へ少し下る必要があります。
この日は風も穏やかで静かな夜を過ごせました。
2日目:前天狗野営指定地→幌加温泉登山口
朝テントから朝日が望めました。
天気は前日ほどは良くなかったのでテントを撤収し下山を開始しました。
前天狗の急登は下の方が気をつけた方がいいですね。
下山した頃には空は晴れていました。山頂は晴れたでしょうか。
ニペソツ登山で気をつけたいこと
水場が限られている
水場は限られており野営指定地付近にはなく、途中の沢でしか補給できません。また北海道の沢の水はエキノコックスという寄生虫が潜伏している危険性があります。沢の水を飲料水として使うには煮沸か浄水器を使用してから飲むことがおすすめです。私は途中で水を補給せず最初から持っていきました。約5リットル持って行ったうち、飲用に約2リットル、調理用に約2リットル使用しました。
エキノコックスとは?
寄生虫の一種で北海道では主にキタキツネが感染源です。感染すればエキノコックス症という肝臓に寄生する病気となります。放っておくと命に関わる病気で早期発見が大切です。
トイレはない
登山道にはトイレはなく、前天狗の野営指定地に携帯トイレブースがあるのみです。携帯トイレの持参は必須と言えましょう。
ヒグマの生息地である
ニペソツ山を含む東大雪の山域はヒグマの生息地です。自分がクマの住む場所を歩いていることを常に意識しましょう。ヒグマとの遭遇を避けるために以下のことを気をつけましょう。
①クマが近くにいないか周囲をよく見る。
②熊鈴音を出してクマに存在を教える。見通しが悪いところや沢の音が大きいところでは手を叩いたり声を出したりする
③登山道にはクマを誘き寄せる食べ物やゴミは残さない、落とさない。
通常であればヒグマの方から人間の存在に気づいて離れていきます。しかし互いに思いもよらず近付いてしまうこともあります。ヒグマと出会ってしまったら音を出さずに、走ったり逃げたりせずに、ゆっくりとその場を離れましょう。近距離遭遇時はクマを驚かさないよう刺激しないようにそっと立ち去りましょう。走って逃げ切ることは不可能です。逆に走ってしまうとクマを刺激してしまいます。
親子グマなどに遭遇した場合、母グマが攻撃的になり突進してくる可能性もあります。多くの場合はブラフチャージという威嚇行為です。難しいとは思いますが、この場合も声を出さずゆっくりとその場を離れましょう。「威嚇行為をする」ということを頭に入れておくだけでも、冷静に対処できる可能性を増やします。
ヒグマは積極的に人間を襲うことはありませんし、わざわざ近づいてくることはありません。しかしどんなに対策をしてもヒグマと会ってしまうこともあり、攻撃を受ける可能性はゼロではありません。クマ撃退スプレーの持参はおすすめです。
ちなみに私は現在の仕事で登山者に対しヒグマ対策を話す機会があり、以上のようなことを話しています。参考にしていただけるとうれしいです。
まとめ
この記事ではニペソツ山を紹介しました。歩く時間も距離も長いですが、景色もよく、花も咲き乱れかなりおすすめです。何よりも旭岳やトムラウシなどの人気の山々に比べて人が少なく、静かな山行を楽しめます。大切では「ニペソツが好き」という方の気持ちもよくわかります。正直多くの人に来てほしいとは言えませんが…かなりおすすめです。
参考にしていただけたらうれしいです!!
最後までお読みいただきありがとうございました!!
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